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香りの旅

香りの旅 デメター農業体験 ピエモンテ・アグリツーリズモ&スローフード 食文化の歴史(2015年6月20日~23日)

6月20日


有機野菜栽培農家 ルイージ・マネンティさんを訪ねる


冬は-3〜5℃まで冷え込むピエモンテ州のソステーニョ村で、独自のbio農法を実践するマネンティさん。訪ねた畑は、標高400mほどの小高い丘にあり、一日中陽の光が降り注ぐ、南に開けた場所。訪ねた畑の他にも、丘のなかにいくつも畑をもっていて、それぞれの土質や環境にあわせて栽培する種類を変えているそう。



「農業というのは誰かひとりを神のように崇めるものでなく、すべての人が自ら学ぶことでアインシュタインのような天才にもなりうる、平等なもの」との考えから、35年の歳月を経たいま、自然農法の分野で独自理論を確立・開花させています。もちろんイタリアの公的なbio認証も取得しています。

根幹にある考え方は、とてもシンプル。


「まず考えるのは環境のこと。生命へのリスペクト。」



マネンティさんが最も大切にしているのは、畑の土のなか、それぞれの地層で生きる微生物の関係性(連鎖)です。表面から深さ〜50cmと、〜100cmで生きる微生物は種類が異なり、地層の上下で関連しあったり、同じ地層内でも食物連鎖が起こっていたりと、土のなかにはミクロな生物達の複雑な関係があるそう。それを尊重することで豊かな土が自然と育まれる、と教えてくれました。土中の上下をかき混ぜることは決して行わず、例えピュアなオーガニック肥料であっても畑のある土地の外から何かを持ち込むことは行わない。それは別の微生物が混入する可能性を防ぐためだそうで、なんと21年間も、外の土地からの成分をまったく加えていないそうです!



マネンティさんの栽培方法は、一貫して“自然”に則しています。


例えば、風にとばされやすい極小サイズのニンジンの種の植え付け時には、大きな雨粒が直接種に当たって流れてしまうのを防ぐ程度のサポートはするけれど、固まって発芽してしまっても間引くことはしない。野菜の栽培時などではすべてを均一な大きさに育てる為に間引くことが多いものですが、マネンティさんは行いません。それは、マネンティさんの野菜を買いにくるお客さんは、子どもからお年寄りまでさまざまだから。


「弱い歯の力でも食べやすい華奢なニンジンがよい子どもやお年寄りもいるし、太々としたニンジンをオーブンでグリルして食べるのが好きなワイン通もいる。お客さんの好みは均一じゃないんだ。だったら間引いたりせずに自然にまかせて、色々なサイズができあがったほうがいいだろう?」

そう笑うマネンティさんは、とても“自然、ナチュラル”でチャーミングでした。



採れたて野菜をシンプルに味つけしたランチはどれも最高でした。




6月21日


アグロナチュラ共同体 ダッビーノ農園を訪ねる


プリマヴェーラの創業当時から取引があるアグロナチュラ共同体。ルドルフ・シュタイナーが提唱するバイオダイナミック農法(植物のエネルギーを最大限に高めるといわれる、オーガニック農法)での栽培を行っています。今回は、花の女王、ダマスクローズの畑で摘み取り体験をさせてもらえることに。最盛期を過ぎたといわれる畑でも、摘み取ってすぐのバラは香り高く、心まで晴れやかになりました。



アグロナチュラ共同体のリーダー格であるピエール=カルロさんによると、バイオダイナミック農法で植物を育てるのはとても大変とのこと。「まず、月の満ち欠けのリズムに合わせて苗の植え時を決めるのだが、そのタイミングを見きわめるのが難しい。さらに、認証を受けたコンポスト(有機堆肥)、プレパラート(調合剤)しか使用が認められていない。そのうえ、苗を植えるときを含め、すべての作業を人の手を介して行わなければならない。雑草を取るのも、苗を植えるのも、人の手と植物が触れることでエネルギーの交換が行われるから。





人の都合ではなく、自然の流れに人がほんのすこし手を添えるように栽培することで、植物本来のエネルギーがあふれるのかもしれません。



その他にもレモンバーム、ペパーミント、ラベンダー、ヘリクリサム、ヒソップ、フェンネル、ディンケル(スペルト)小麦の畑も見ることができました。最後に訪れたのは、デメター認証を受けている世界一広いラベンダー畑。圧巻の美しさでした。





6月21日


夏至の夜のインセンスを体験


夏至の夜のインセンス…! なんて魅惑的な響きなんでしょう。私たちは、夏至の日よりも一日早かったのですがケルトの儀式を体験しました。


夏至の日は、一年でもっとも日が長い日。つまり太陽のパワーがもっとも強くなる日にイヌラとヨモギを摘み、それをくべてインセンスを炊く儀式が行われます。


インセンスを炊き、願い事をいってからその火を飛び越えると願いが叶う…!?という言い伝えがあります。みんなで輪になって唄をうたい、残り半年の幸せを祈りあったあとに、ひとりひとり火を飛び越え、その度に拍手が沸き起こりました。



この時、あたり一面にたくさんの蛍が飛び回っていました!(写真におさめることができずに残念です) 夏至の夜のインセンスのまわりに、ぽお、ぽお、と大量の蛍が舞う美しい様は、忘れられない景色のひとつとして刻まれました。




6月22日


ピエモンテの芳香植物について クリエイションワーク


午前中はプリマヴェーラのアヌサーティ・トゥムによる講義。テーマは「ピエモンテの芳香植物」です。ラベンダー、メリッサ、ペパーミント、ローズマリー、クラリセージ、タイム、マージョラム…。名前だけ知っていた芳香植物の数々を、旅の途中で目にした後に話を聞くので、日本で本を眺めていたのとは段違いに情報が入ってきます!



2時間ほどの講義を終え、5つのチームに分かれてクリエイションワークを体験。アロマテラピーカードを引いてチームに分かれます(それぞれの芳香植物が描かれたカードを全員に配り、チームごとにアヌサーティさんが植物名を読み上げる、という面白い方法でした)。





5つのチームにそれぞれ与えられた課題は、次のようなもの。


A:オトギリソウとヤロウを摘んで浸出油を作る


B:[ピエモンテのそよ風]をテーマにしたルームスプレーを作る


C:[トラベル]をテーマにしたロールオンを作る


D:[クレオパトラの夢]のローズバスソルトをブレンドする


E:芳しいボディパウダーをデザインする





オトギリソウとヤロウを摘んで浸出油を作るチームは、実際に近所の道や崖などで植物を摘みました。日本では目にすることの少ない植物があちこちに生えていて、同じチームの方に名前を教えてもらう等、とても楽しい作業でした。最後に、それぞれチームで作ったものの発表をしましたが、[クレオパトラの夢]ローズバスソルトの香りの芳しいこと!(5種類のローズ精油を、なんと30滴以上も加えて贅沢にブレンドしたそうです)うれしいお土産もいただき、充実のひとときとなりました。




6月22日


アグロナチュラの蒸留所で ラベンダーファインの蒸留を見学


ラッキーなことに、2015年の収量が豊富だったというラベンダーの水蒸気蒸留を見学できることに。水蒸気蒸留法はまず大きなカゴに植物体を均一に詰め込むことからスタート。その後、下から水蒸気を植物体全体に通します。すると精油成分が水蒸気に溶け出して、精油を含んだ熱い蒸気がパイプに導かれ、冷却器の中を通る間に、精油と芳香蒸留水が約30℃まで冷やされて缶に溜まっていきます。精油は軽いので、芳香蒸留水の上に浮かぶことで分離できる仕組み。アグロナチュラは衛生的な観点から屋内で冷却しているため、昆虫やゴミの混入や太陽熱による成分変化を防ぎ、品質管理に努めているそう。




さらにアグロナチュラで特徴的なのは、徹底したトレーサビリティ。ほんのわずかな収量しかない農家の精油も、別の大きなロットに統合してしまうことは決してありません。何かトラブルがあったときに、すべての農家がその結果に対してきちんと責任をもつ誠意のあらわれで、オーガニック認証の規定でもあるのです。



ユニークなのは、ルードルフ・シュタイナーの思想。精油は、その香りをよくするため、2週間ほど熟成させてアルゴンガスを充填して密閉します。その後さらに出荷まで紫色に塗られた瓶のなかで熟成を続けるのですが、なんとその間中、精油に古典ミュージックを聞かせているとのこと。物にも人とおなじエネルギーがあるという考えで、精油のなかのエネルギーを高めるそう。イタリア産のラベンダー精油を香るときに想像すると、いっそうリラックスした気分が高まりそうですね。





6月23日


オーガニックワイン農家のマルカリーノさんを訪ねる


ワインに少し詳しい人なら知っている、“バルバレスコ”という地区名。名産地バローロと肩を並べるワインの産地です。タンニン(渋み)が強くアグレッシブな味わいのバローロが男性的と言われるのに対して、華やかさとエレガントさが女性的と支持されるバルバレスコのワイン。バローロとバルバレスコの距離はそう遠くないのですが、ふたつの土地で同じ品種のブドウを育てても、まったく異なる味わいになるというから不思議です。そのポイントは、「1600万年前に海底だったときの砂の層が、地下どのくらいの深さに在るか」。この層が地層のどの位置にあるかでブドウの味わいが変わり、ワインの味わいもまったく違うものになるそうです。



訪ねたのは、15ヘクタールもの広大な敷地を先代から譲り受けてbioワインを作っているマルカリーノさん。ピエモンテ州ランゲ地区のなかで一番早く、イタリア全土のなかでもかなり古くからbioワインの製造をしてきた農園です。おじいさんの代から化学肥料などは使ってこなかったので、もともと土地がクリーンな状態だったにも関わらず、最初はとても大変で挑戦の連続だったといいます。



日本での人気も高く入手が難しい「オーガニック白ワイン、NE(ネ)」などで知られるマリーナさんのブドウはとてもやさしい方法で育てられています。病気を予防するならば、「病気にかかってから薬を蒔く」のではなく「病気にならないようにブドウの木自体の抵抗力を高める自然のものを蒔く」やり方を選ぶ。虫を駆除する薬は散布せず、鳥を集めて虫があまり寄り付かないようにする。畑の境界線には病気に強い品種を植え、病気の侵入を防ぐような配置で複数種のブドウ栽培を同時に行う。数々の工夫で化学薬品を使わずに高品質なピエモンテ土着のブドウ品種をいくつも栽培するマリーナさんの畑は、ピエモンテの土壌から信頼され、愛されているように感じられました。


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